センニンフグの毒は1,000人殺せるか?

先日の釣行で、センニンフグを2匹釣ったのですが、
どうにかなんとか食べられないのかなー?と気になったので色々調べてみました。

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そもそも名前が「センニンフグ」って、結構、インパクトのある名前。由来が気になるところですが、

1,000人殺せる毒を持っているから、とか

修行を積んだ仙人のような風体だから、とか

警戒心が強くあまり見ることができないから仙人のよう、とか

色々ありましたが、由来に関しては、あまりパッとした情報は調べることができませんでした。

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その中でも「1,000人殺せる毒を持っているから」という話は実際に聞いたことがある。

それは本当だろうか?センニンフグの毒性を調べてみる。

猛毒テトロドトキシン(Tetrodotoxin/TTX)をもつ。青酸カリの約1,000倍。名探偵コナンもペロっとできない…。

毒部分としては、卵巣は猛毒腸は強毒筋肉・血・その他箇所は弱毒、らしい。全部じゃん…。

毒症状としては、食後20分~3時間程度で現れ、第1段階~第4段階に分けられる模様。

第1段階:口唇~舌に軽い痺れ、指先に痺れ、歩行困難、頭痛・腹痛など
第2段階:不完全運動麻痺、嘔吐、運動不能、知覚麻痺、言語障害、呼吸困難、血圧降下
第3段階:全身完全麻痺、骨格筋弛緩、重度の言語障害、重度の呼吸困難、血圧の著しい低下
第4段階:意識消失、呼吸停止、呼吸停止後に心臓は動くがやがて停止し死亡

治療法・解毒剤としては、無し。ないのかよ…。

ただし、フグ毒は排出が早いので8時間程度の生命維持ができれば、回復し後遺症にもならない可能性が高い。らしい。

第2段階から呼吸困難の可能性が高くなるので人工呼吸が必須。とのこと。即、病院に行かないと死にますね。

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これは調べてみて初めて知ったんだけど、毒の力を表す単位というものがあるらしい。

毒量(MU)は、マウスユニット(Mouse Unit)というらしく、
色々な毒があるけど、フグ毒の場合、体重20gのマウス1匹を30分間で死亡させる毒量を1MUと表すっぽい。

求め方としてはこうなる模様。こんな式みたことないよ…。毒力というパワーワード…。

毒力(MU/g)× 臓器もしくは食べた全重量(g)= 毒量(MU)

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じゃあ、人間の致死量センニンフグの各部位の重量・毒力が分かればこの問題は解けるということ。

日本水産學會誌(発行1984年12月)で、センニンフグ1個体(55cm/3kg)の毒性が調査されていた。

まず、人間(50kg程度)の最小致死量は 10,000MUらしい。個人差あり。毒性にもよる。

そして、センニンフグの各部位、卵巣・腸・肝臓・筋肉・胆汁・皮・腎臓・脾臓・その他消化器系の重量・毒力・毒量がこちら。
(筋肉は推定量らしい)


毒量を全部位足すと 175,410 MU

ということは、センニンフグ1匹 55cm/3kgの個体を全部余すことなく食べた場合、人間は約17.5人死ぬ ✞ ということ。

結果、センニンフグの毒は 1,000人殺せない!

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まあ、センニンフグ55cm/3kgっていったら、割と小さい方だと思うので、2倍くらい大きいとしても35人殺というところ。

ただし、センニンフグは南方に行けば行くほど毒性が強くなるという研究結果もあるらしく、
また、有毒率というのもあって、筋肉 30.6%・肝臓 47.2%・卵巣 100%・精巣 46.7%という毒性調査もあるようなので、
個体にもよりけりで、一概には言えなさそうだけど、言っても1,000人までは程遠い感じ。

これで計算違ってたらめちゃくちゃ恥ずかしいけどw

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あと、現在は使用されていないが、テトロドトキシンは、致死量をはるかに下回る量を適度に用いると、
鎮静剤・鎮痛剤としての働きがあり、リュウマチ・神経痛に効くということが言われている模様。

昔、沖縄では食べていたということが言われているけど、
有毒率・毒力・毒量の少ない部分を少し食べて薬変わりにしていたのだろうか。

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どうにか食べられないかなーと思ったけど、食べるのは無理っぽそう。

次回からも釣れたら迷わずリリース。

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参考にしたサイトなど

日本水産學會誌(発行 1984年12月)

沖縄近海産フグの毒性調査(沖縄県衛生環境研究所報 第40号 2006)

東南アジアのフグ類の分類と毒性に関する研究(独立行政法人国立科学博物館 2012年)

気をつけよう 怖いフグ毒による中毒(一般財団法人 東京顕微鏡院)

自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒(厚生労働省)

WEB魚図鑑 センニンフグ

食品衛生の窓 危険がいっぱい ふぐの素人料理(東京都福祉保健局)



など。専門家ではない素人調べですので詳しくは各サイト・書籍・論文などをご参照ください。




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